黒龍は留める力を持つというけど、召霊の力をすでに借りているだけで十分だった。だからこれからも私が黒龍の力を行使することはないはず。

 

だけど今だけはもう少しこの幸せな時間を楽しもう・・・

 

そんなことを考えていたら、五月兄さんが「線香花火」を差し出した。

 

「ほら、七緒好きだろう?家にあったのを持ってきといてよかったよ。花火は夏の風物詩の一つだからね」

 

蛍を楽しむために篝火は控えめだったから私達は花火を満喫することができた。

 

兼続さんだけは花火の仕組みに興味津々の様子だったようだ。

うちから兵法に関する古書を持ち帰ったくらいだからきっと戦の知識になってしまうんだろうけど。

 

それから熟したまくわうりや梨をみんなで食べた。五月兄さんの剥いた梨ウサギと手先が器用な大和がカービングの薔薇を施したまくわうりは場を盛り上げることに一躍かったみたい。

 

食べるのちょっともったいなかったな。

 

甘味が貴重な戦国の世だからこそ旬のフルーツのデザートはありがたかった。