「おいおい、俺の話も聞いてくれよ神子殿。俺は田んぼの視察に行くから虫には詳しいんだ。稲を守るには知識は大事だからな。そんな俺からすれば蛍は奇麗だが食えない虫だ。だが君が喜んでくれたなら取ってきた甲斐があったというものだぜ」

 

兼続さんたら。その分類どうかと思います。内心突っ込んでいたら宗矩さんがぼそりと控えめに言う。

 

「神子の役にたてたならそれでいい」

 

相変わらずのクールさだけど宗矩さんはさりげなく気遣いができる人だった。

 

今は家康殿の配下として家を復興させるために尽力してるみたいだけど、元は柳生の里育ちだというから、野山をかけまわってたんだろうな。

 

考えてみれば父上だって昔は近所の子供たちのガキ大将だったと聞くし今は立派になった八葉の皆にも子供時代があったんだよね。

 

長政さんは父上の人質になってた子供時代に秀吉さんのところに預けられて長浜城で過ごしたって話だったけど、少しでも子供らしい時間があったなら良かった。

 

長政さん自身に悲壮さはなくて、むしろ父親の英断を誇っているみたいだったからよりそう思う。

 

大和の話ではみんなで手分けしたらしいけど光景が目に浮かぶな。

 

昼に蛍取りなんて大変だったと思うけど私の為にみんなが力を合わせてくれたことが嬉しくてしかたない。

 

これでまた少し私達の絆が増したなら良かった。

 

「長政さん!武蔵君・・それにみんな・・今日は本当にありがとうございました。素敵な誕生日の思い出ができました」

 

感謝を込めて頭をさげる私をみんな笑顔で見守ってくれていた。

 

こんな大切な時間がもっともっと続けばいいのに・・

 

そう思わなくもなかったけど、私は白龍の加護を受けた神子として前に進まなければならない。

 

そうだよね白龍?

 

私の呼びかけに応えるように「シャン」とどこかで鈴の音が聞こえた気がした。