「神子殿、失礼する」
しばらくして長政さんが顔を出してくれた。
「わざわざお呼びだてしてすみません長政さん・・さっきのことですけど」
気になることはいろいろあったけどやっぱり桜花精のことを尋ねてみることにした。
「なぜあんな怨霊が姿を現したのか幸村さんは言っていましたか?」
露天風呂を勧めたのは幸村さんだったけど、そもそもここに来ることになったのも恋の病に効くとかだったし・・なにを企んでいるのかな?
「ああ・・それだが、なんでも真田の庄に伝わる伝承が元らしい・・恋仲の男女がともにあの湯に浸かると幻の桜を見ると・・見た者は永劫の契りを交わせるそうだ。まったく埒もないことを・・と言いたいところだが、現に我々は幻の桜を見た。だが正体が怨霊である以上神子と八葉でなければ対処はできなかっただろう。つまり八葉と神子の絆を試すための試練だったとも言える」
え?それって一緒に怨霊倒して絆を深めて仲良くなれるってこと?
幸村さんらしい気の使い方に脱力してしまう。
だって私達は恋仲じゃないもの。‥違うとも言い切れないかな?
キス・・しちゃったもんね![]()
だけどなによりそんなロマンティックな話が長政さんから聞けるなんて・・
「ふふ・・なんかロマンティックですよね、誕生日の思い出としてはちょっと微妙ですけど」
怨霊は怖かったけど、幻の桜はとても儚くて綺麗だった。
「ロマンティックとはなにかわからないが、察するに趣があるということだろうが、誕生日とはお前が生まれた日という意味か?初耳だな」
一人納得する長政さんに微笑み返す。私達が普通に使う聞きなれない言葉でも勉強熱心な彼はすぐに学びとってしまう。
「私達の世界じゃ家族や友人と祝うんですよ。まさか異世界で誕生日を迎えるなんて思わなかったな」
父や母は留守がちだから慣れてはいるけど、それでもいつだって私の誕生日には集まって祝ってくれた。
こっちに来てから随分経ってしまったようにも感じるしあっという間だったようにも感じる。本来はもっとずっと先だったはずの誕生日がもう巡ってきてしまったなんて・・
本当に不思議な巡りあわせ