「お見事!鮮やかな勝ち戦だった」
私が勝てたのも長政さんの力添えがあったからだ。私は神子として彼の期待に少しは応えられたかな?
周囲に桜のほのかな香りだけが漂う・・怨霊の出現の要因となった山桜の古木はもはやなんの怪異も起こさないだろう。
「それはそうと神子殿・・まるで衣通姫(そとおりひめ)もかくやという有様だな」
!!?
ずぶぬれのまま長政さんの陣羽織をはおったままだったことを思い出して動転した私はそのまま湯に浸かってしまった。
長政さんの陣羽織は台無しになってしまったけど、しかたないじゃない。絹で刺しゅうされた高価な品だってことは私にだってわかる。
だけど濡れて肌が透けた姿を長政さんの目に晒していたなんて・・
長政さんは長政さんでなにも身に着けてない状態だったし。
しかも何度も庇ってもらってしまったなんて今思い出しても恥ずかしくてならなかった。
「おい!・・・はあ・・陣羽織は諦めるしかないか。さすがの俺も神子殿に一糸まとわぬ姿でいろとは言えんからな。戦になれば天候が荒れることもある、なに着替えはあるから気にしなくていい。」
うううう・・・・ごめんなさい長政さん
気前のよい長政さんの言葉に申し訳ない気分で一杯だったけど、今更ながら長政さんがいてくれてよかったと思う。