「そうかい。・・大和も気の毒に」

 

 

「あちらの世界ではなくて子供の頃のことですけど私、許嫁がいたんですよ?父上があんなことになってしまってあの子も行方知れずになってしまって・・あの子どうしてるのかな」

 

ひとりごちる私を阿国さんは複雑そうな顔で見ていたけど嘆息の後気を取り直したように言った。

 

「追憶に浸るような年でもないだろう?過去のことは忘れなよ。この世界じゃしがらみってやつはどこまでもつきまとうからね。あんたは別世界で自由を手に入れたのに・・それでもこうしてこの世界に来てくれただろう?それだけで私達は十分感謝してるんだよ?」

 

――阿国さん、優しいな

 

「ありがとう、阿国さん。私神子として頑張らないとですよね」

 

「あんたは頑張ってるってば。・・ねえ神子、カピタンと長政のことだけど・・」

 

 

「はい」

 

僅かな躊躇のあと阿国さんは語りだした。

 

「悪いことはいわないからカピタンはやめておいたほうがいい。あいつはなんだか嫌な感じがするんだ」

 

この時の阿国さんの言葉を後になって私は思い知ることになってしまったけど、水属性の阿国さんはあの時からカピタンに潜む邪神を感じとっていたのかもしれない。

 

「私はあんたが傷つくところは見たくないよ。女の勘とでも思ってくれればいいさ。だからね?神子カピタンとは二度と二人きりで会わないでくれるかい?」

 

阿国さんにはたくさん心配かけちゃったし、これ以上皆にも心配かけたくなかったから私は素直に頷いた。