好き勝手言っているわね・・

 

「なんだ・・あの者達が気になるか・・?やめておけ、気にかけるだけストレスが溜まるだけだぞ」

 

ライザール様のアドバイスに従うことにする。

 

「ええ・・そうみたいですわ」

 

いけない。・・ふとした瞬間に密偵に戻ってしまう。

 

「ライザール様・・私は密偵です。でも貴方の前ではただの女でいたい。貴方はどちらの私をお求めなの?」

 

気づいたら苦しい胸の内を吐露していた。曖昧だから居心地が良いってわかってるのに・・・私ったらなんてことを・・

 

すると立ち止まった王は私の手を両の手で包み込みながら言った。

 

「どんなお前であれお前はお前だろう・・私だって同じだぞ、シリーン。王であると同時に一人の男でもある。両者の立場の間で葛藤だってあるし、必ずしも期待に添えない時もある。そんな私だからこそこう思う、ありのままのお前でいればいい・・とな」

 

 

私らしくあればいい・・・

 

「それとも密偵として私を誘惑してみるか?」

 

 

私の耳に囁きかけるライザール様の美声に肌がゾクリとする。

 

頬を上気させ完落ち状態の無様な私を見かねたのかライザール様は嘆息された。

 

「すまない・・・だが動揺しすぎだろう?そんな顔私以外の男に見せるなよ?」

 

プンプン

 

揶揄われてしまったわ・・もう!意地悪!

 

 

「ははは・・いじけるなシリーン。わかっただろう?いずれにせよお前はお前だってことだ。愛すべき可愛い女だ」

 

ドキドキ

 

こんな風に誘惑されて手も足も出ないなんて・・相手がライザール様だから。

 

王もそれがおわかりなのね。

 

「だが誘惑するのは歓迎だぞ?・・・ただしその場合逃がしてやることはできないがな。覚悟がないのならばやめておけ」

 

 

しっかり釘を刺されてしまったけれど、でも紳士として見逃してくださった貴方の優しさを信じるわ・・・だから中途半端な誘惑はしないでおきましょう。

 

「ご忠告に従います」

 

大人しく応じるとライザール様もあっさりと頷き返した。

 

「ああ、その方がいい」

 

気分を害された様子もなくライザール様もどこか安堵した様子だった。

 

お互いに心に住まう相手がいて、それでもお互いが気がかりで慎重になってしまう・・・そんな距離感がもどかしくもあり居心地よくもあった。