他の踊り子の娘たちは良縁があればいつでも嫁ぐのが慣例になっていたし、店主様のモットーで正式な婚姻以外は全て断っているようだったが、いずれにせよ若くして嫁ぎ家庭に収まり安定した生活を望む娘達ばかりだった。

 

けれど私は自分の才能を生かしたいと思っていたから、どれだけ求婚されてもはねつけてきたのだ。

 

もちろんルトへの思慕が大きかったのも確かだけれど、それだけではない。

 

この国に蔓延している差別や偏見をよしとしなかったから、価値観の相容れない者との婚姻など考えられなかった。

 

ヴィンス殿下を選べなかった理由にも関わることだった。

正直なところ女性が冷遇されているあの国で生きることはできないと思った。

 

ただの恋愛ならばいざ知らず結婚には様々な条件や制限が伴う。

けれど生まれて初めて今のありのままの私を受け入れてくださる方に出会えたから少しだけ考えを変えることにした。

 

だけど同時に躊躇も感じる。

なぜならあの方の妻にと望むのならばそれは王妃の地位を得たいと望むのと同じことだったから。

 

一夜の女にも、ましてや側女になる気などない私にとってそれは避けて通れぬ選択だったけれど、あとはライザール様のお気持ち次第でもある以上答えは出なかった。

 

血筋ではなく能力を買われる王ならば可能性はゼロではでないはず。

 

そう思えば心が揺れる・・

私こそ・・あの方に何を求めているのだろうか?

 

まだやっと恋を自覚したばかりの私が、王である方に何を望むのか・・

 

心に秘めた願望が叶うことなどあるのかはわからない。

 

立場は曖昧だったとしてもこのシャナーサの国民として国が直面している問題はわかるつもりよ・・

 

知識も教養もあって損はないものだから、未来を担う子らを憂えるならば、彼らを庇護して学習する機会と場所を与えるのは王の務めだった。