ターラがカピタンさんの恋人なら鬼と通じているかもしれない以上由々しきことではあっても、恋人とキスしたからといって罪悪感などもとよりないだろう。

 

でも何よりも私にバレてもカピタンさんに動揺がないことが無性に悲しかった。

 

所詮は私の片思いでしかないんだって思い知ってしまう。

そうりゃあそうだよね。カピタンさんとは旅の合間に何度か会っただけだもの。

 

それでカピタンさんの特別になんかなれるはずない。

 

上せていたのは私だけだった。そんなことわかってたのに・・・

嫉妬なんて初めてで苦しくてたまらなかった。今の私はどんな顔をしているだろう?

 

阿国さんが袖で覆ってくれたからカピタンさんには見えなかったけど、一人だったらきっとこの場から逃げ出すことしかできなかった。こんな動揺した姿を見られちゃった気まずさはあっても、兼続さんと阿国さんがいてくれてよかった。

 

私の動揺を誘ったのはカピタンさんだけじゃなかった。

 

何よりも気に障るのはターラが勝ち誇ったような目で私を見ていたことだった。

 

「覗き見なんてはしたないこと。龍神の神子さまともあろう方がねえ」

 

彼女とは会うたびに怨霊をけし掛けられて戦うはめになったけど、今はそれ以上にダメージが大きかった。

 

「あの鬼、神子が見てるの知っててわざとキスをねだったようだね。性悪だねえ」

 

「で、彼もそれにのっかったってところかな。大の大人が雁首揃えてなにやっているのだか。世も末だ」

 

――え?

 

カピタンさんも私に気づいた上で見せつけたのだということがショックだった。

 

揶揄われたんだと思った。私の反応を見て二人で楽しんでいるんだって・・

 

そう思ったらいたたまれなくて消え入りたいほど恥ずかしくて立ちすくむことしかできなかったけど、阿国さんが抱きしめてくれて慰めてくれたからカピタンさんを見ずに済ませることができた。