ライザール様・・貴方が好きだわ・・
胸に手を当ててはやる心臓の鼓動を感じる。
ライザール様と出会うまで密偵だったはずなのに今はただの女としてライザール様の全てを受け入れたいと身も心も感じている・・私は変わりつつある・・
それはいいことかしら?
・・・・・
本当はすごく嬉しかったけれど手放しで喜べないのは不安なことが山積みだったから・・だってこんな状況は初めてですもの。
それに求愛されたわけでもないから舞い上がる状況でもなかった。
「・・・寝ましょう」
寝台に横たわると自然と眠りに誘われる。
密偵として短時間でも休憩できるように訓練された結果だった。
こんな時でも睡眠がとれるのはありがたいけれど、夢を見るのまではとめられそうになかった。
その夜見た夢はとても官能的なものだった。
寝台に横たわる私に覆いかぶさるライザール様の体温を拒むことはできないまま彼に抱かれる・・そんな濃密で甘美な夢だった。
目を覚ました瞬間、それが夢だったと知り安堵と同時に落胆も覚えた。
またライザール様がお渡りになったのかとも思ったけれど、体に異変はなく私の願望から見たただの夢だったようだ。
恋が心と体にもたらす懊悩、自分自身で体験してみて初めて「恋の病」というものを実感することになった。