「お前の話が聞けて良かった・・・今夜はもう遅い、戻って休むがいい」
言葉はいつも通り気遣いに満ちていたけれど、その表情が裏切っていた。
初めて間近で欲望に濡れて爛々と輝くライザール様の目を見てしまい柄にもなく動揺してしまう。
今彼を誘惑すればおそらく叶うだろう。それほど危うい空気をはらんでいた。
でも欲望に流されてしまえば互いに後悔するだろうこともわかっていた。
私は一夜の女になる気はないもの。
「ではそうさせていただきます。おやすみなさい・・・ライザール様」
動揺を押し隠し私は寝台を降りると逃げるようにドアに向かう。
手を出そうと思えば出せた王が見逃してくださったのだからその好意をふいにはしないわ。
ドアをくぐり鍵をかけ、扉に背を預けたと同時に安堵のため息がでた。
もちろん王だって鍵をお持ちだから開けようと思えばできるでしょうけど・・
昼間私が寝ている間にお渡りになることはあっても、目覚めている時に王があの扉を使われたことはなかった。
こちらは王が私に許した領分だからあえて立ち入らないでいてくださるのだと思う。
それにしても王のことを知りたいと思った矢先に、あんな踏み込んだ質問をされることになるなんて思わなかった。
王のお考えを知る機会などそうはないでしょう?
もし私がレイラ様で予定通り結婚していたらこんな風に互いを知るための時間を持てたかどうかもわからなかった。
互いをより深く知ることで高まる想いもある。
そう思えば貴重なひと時だったわ・・