コンコン
意を決してノックしてからドアを開くと、水煙草を手に寝台で寛がれる王のお姿があった。
そうしておられるとちょっと近寄りがたい雰囲気を醸し出しているように見えるわね。
けれど彼は私の顔を見た途端、安堵したように笑みを返してくれた。
「ああ、待ちかねたぞ‥シリーン。さあこちらへ来るがいい」
招かれて王のお傍に行くと、私は寝台に腰掛けた。
ああ・・貴方のいる空間だわ・・
カリスマ性を持ち光輝を放つライザール様がお傍にいることがいつの間にかごく自然なことと馴染んでしまったのが不思議でならなかった。
私だってカマルでは舞妖妃ともてはやされているけれど、王の存在感はそれを遥かにしのぐものだった。
「それではライザール様‥今夜ですが・・」
気を取り直した私は今夜、どなたの話題を提供するか逡巡する。
迷いがあったのは話したいことが別にあったからだった。
すると王も同じだったのか手で制されると、私の反応を窺うように提案された。
「待て、シリーン。今夜は王子の話はいい、できればお前のことを少し聞かせて欲しい」
――え?
密偵のことは守秘義務もあるから滅多なことは話せないし、踊り子としてのことは昼間も少しお話ししたけれど・・・何を話せばいいのだろうか?
でも私に興味を持ってくださるのは嬉しかった。