そもそも王宮は一般庶民には解放されていないが、先ほどライザール様とボートに乗った折お伺いした話では、あの少年トイはなんと王宮まで直訴に来たことで知り合ったらしい。王は少年を咎めることなく話を聞かれた。
そんな例外はあったとしても基本的にこんな機会でもなければ訪れることのできない場所だった。
まだ行ってないのは・・・厨房、使用人部屋、宝物庫、衛兵の詰め所、武器庫、牢、それからどこかしら・・・そうだわ!あの場所ならばもしかして・・・
ライザール王に縁のない場所だからこれまで意識の中になかった場所だった。
すると王はこちらをじっと見つめられたが、許可してくださった。
「まあいいだろう‥好きにするがいい。なにか閃いたようだが・・もし気が付いたことがあれば教えてくれるだろうか?」
私の意見に耳を傾けてくださるのね。だから即座に頷き返した。
「ええ、ぜひ」
考えはあってもそれが可能なのかは現地に行ってこの目で見てからでいいだろう。
王の視点とはまた違った視点で見れば名案が浮かぶ可能性だってあるでしょう?
やがて食事を終えた私達は共に部屋まで戻った。
「ではまたあとでな・・待ってるぞシリーン」
一旦はそれぞれの部屋に戻り、秘密裡に内ドアを使い互いに行き来する私達の逢瀬を知る者はない。
私は確かに婚約者だけど、だけど王と深夜に会うのはその立場をもってしても不適切だった。