やがて市内に到着した私達は馬を預けて、徒歩でバザールを巡ることにした。

 

朝だから市場はせわしなく人や物が行きかい活気づいていた。

挽きたてのスパイスや乳香や沈香などの香木や、隣国から入荷されたばかりの生花、焙煎されたコーヒー、新鮮な肉や魚、またそれらを焼く香ばしい匂いが複雑に交じり合った匂いが出迎える。

 

一通り見まわった後、ふと足をとめたライザール様がこちらを見た。

 

「実は今日の目的はここからだ。お前はカマルの住人だから知っているだろうが、わが国にはいまだに貧富の差があるのが現状だ」

 

 

「はい、それはもちろん存じてます」

 

カマルの一画は不夜城だけに煌びやかな反面、バザールの裏通りにはいまだに貧困にあえぐ者たちが住処にする一画があった。

 

「ならば話は早い。今日これから会うのはそんな子らを束ねるボスだ」

 

そう言い置くとライザール様は私を伴い寂れた一画へと足を踏み入れた。

 

異臭が漂う昼なお暗い一画には子供たちの姿があった。

 

やがて顔馴染みらしき少年が顔をだし、ライザール様に挨拶を返す。

 

ただいつもと違い連れの私を警戒した目で見返した。

 

「そいつ誰だよ?」

 

するとライザール様は当然のように答えられた。

 

「彼女は私の婚約者。いずれ王妃になる女性だ」

 

 

たとえ相手が子供相手の方便とはいえそんなふうに紹介されたらやはり悪い気はしなかった。でもいいのかしら?