「お嬢様・・のぼせてしまいますわ。お上がりになって」
上気した顔をみとがめた侍女に促されて湯から上がる。
いつも通り数種類ある香油の中からローズを選ぶと侍女が肌のお手入れをしてくれた。
足に丁寧にオイルを塗りこむ侍女を見ていたらライザール様の掌の感触を思い出してしまいまた頬が火照ってしまう。
会ったばかりなのに、気づいたら素肌に触れることを許していた。
でもあくまでもライザール様は紳士だったからさっきみたいに揶揄うことはあっても身の危険を感じることはなかった。
私は彼の婚約者じゃなくてただの身代わりなのに・・
もしかすると王は私相手にシミュレーションしたいだけかもしれない。
ずっと独身だったわけだし、妻のいる生活というものを事前に体感されたいだけかも・・
そう思えば身代わりの私に対する態度も納得できる気がした。
でもなぜかしらこんなにドキドキしてしまうなんて・・
私は王の恋人ではないのに錯覚してしまいそうになる。
これまでだって魅惑的な男性との出会いは幾度なくあった。
彼らは私自身を求めてくれたのに・・
でも結局決め手にかけて一歩踏み出せなかった。
そんな私が出会って間もないライザール様に気づいたら惹かれていた。
たぶんこの場所(シャナーサ)だからかもしれない
ルトと同年代のライザール様に似た面差しを見てしまうのも無理はないでしょう?