夕食前に風呂に入るために訪れると、ちょうどライザール様が着替えておられるところだった。(もちろんお一人でよ)
私に気づいたのか逞しい褐色の背筋を覆うように青いローブをまとう瞬間、ちらりと見えた左の上腕に目を奪われる・・
――あれは傷かしら?
不思議なほど胸がざわめいてしまう。
ライザール様も肌に傷跡が残るほどの怪我を負われる体験をされたのだろうか?
そういえばルトもそうだったわね
一緒に川で水浴びをした時に腕の傷跡に気づき尋ねた私に、手負いの野生の黒豹を保護した時に怪我を負ったと打ち明けてくれたけれど、それこそ相棒のカルゥーとの馴れ初めだったのだ。
親兄弟を失いさ迷っていたカルゥーに母を失った自分を重ねてしまい放っておけなかったんだってルトは教えてくれたわ
親を求めて必死に鳴く鳴き声からカルゥーって名付けたんだって
ルトとカルゥーの出会いも運命だったのね。
自らも怪我を負いながらも孤独を癒してくれたカルゥーがルトにとってかけがえのない相棒になるのは時間はかからなかった。
そう思えば砂漠で行き倒れていた私もルトに拾われたわけだし、ルトは面倒見のいい兄のような存在だったけど、私の中でいつしか憧れの存在になるのに時間はかからなかったんだわ。