考えてみれば王の方こそ得体の知れない密偵の女とふたりきりなんて不安はないのかしら?修羅場にはなれていそうな方だけに平静を装われているだけかもしれないわね。
「こんな時間にお邪魔してごめんなさい。随分夜更かしされるのね?」
寝台に腰掛けた王が手元の書類を回収するのを見ながら声をかけると、ライザール様は「まあな」と応えた。
見ると床にも書類が落ちているようだった。拾ってさしあげようかしら?
つい性分で拾い上げた書類を見ると、次世代指導者会議のあらましと題されていた。
――これは
密偵の性で一度見たものは忘れないし、多言語で書かれた書類も速読できてしまうからかえって悪いことをしたかもしれない。
私の手からライザール様が書類を回収しながら、言った。
「別に秘密ではないから気にしなくていい。近隣諸国の次世代を担う王子を招き我が国で会議を行おうと考えている。今は各国にスケジュールの調整も含めて打診しているところだ」
――まあ!
我が国の王はまだお若いけど、確かに他国の王様方は高齢な方が多いものね。
「それは素晴らしいですわ。私も数人の方々とお目にかかったことありますけど、皆さまやはりライザール様の手腕を高く評価されているようでした」
外交に来られるのはたいがい外交官だけだし、遊学に来られるくらいしか他国を訪問する機会などないからあの方々も喜ばれるだろう。