目元を覆うベールは婚約者の存在は印象付けながらも人相までは把握されたくない王の苦肉の策だった。
「ベールをしたままではいろいろ愉しめませんからなあ・・若く猛った王にはなにかとご不便でしょうなあ。お察しいたしますぞ」
―!
内心ゲスの勘繰りにうんざりしながらも笑みは絶やさない。何をにおわせているのかわからない、初心なふりを通すことが肝心だった。
それにいちいち腹を立てていたら身が持たないでしょう?
王と対立している方々もいるから関係は把握しつつも、こちらの感情を気取られないようにしなくてはならなかった。
ただでさえ心労の多そうな方だけにライザール様の足をひっぱらないようにしなくては・・
すぐ隣で苛立ちを募らせるライザール様に気づき、指先にそっと触れると彼がこちらを見た。
どうか落ち着かれますよう・・私なら平気ですから
言葉にはせずに訴えたがライザール様がふっと微笑まれた。
「無論・・・妻のベールを取り去れるのは夫の特権だからな。方々にはご遠慮願おうか」
不敵に臣下を見据える王の威圧感漂うオーラにびくりと大臣がひるむ気配がした。
「も、もちろんでございますとも。なんにせよ、ご婚約おめでとうございます。我々も安堵しましたぞ」
慌てたように口々に祝福する大臣達を前にライザール様はすでに怒気を払い鷹揚に頷いて見せた。
よかった・・なんとかしのげたみたいね。