そう、名前は「カルゥー」だったわ

 

ルトはなんて呼んでいたかしら・・・確か・・

 

彼はカルゥーを相棒と認めながらも別の呼び方をしていた。

伝説上の生き物になぞらえていなかった?

 

――奴はマウトグイーダだ

 

確かにそう呼んでいたはず・・よかった、まだ覚えていたわ

 

記憶をとどめておくのは難しいが、日記に記したり時折思い出すことによって辛うじて保たれていた。

 

ただ日記を記した当時、私はまだ12歳だったから字だって今ほど綺麗じゃなかったし文章だって拙くて、今読み返してみても歯がゆいものだったけど。

 

文化の遅れているシャナーサにはフレイン帝国のような写真などの技術もなかったからルトの思い出はすべて私の記憶の中だけのものだった。

 

記憶に容量があるのだとして、日々更新されていくものだとしても・・

 

ルトと砂漠で別れてからたくさんの人々に出会ったし、依頼を果たせば忘れてしまうこともあってもルトのことだけは覚えていたかった。

 

ラベンダーの香油で素肌を整えてから用意された夜会のための衣装に着替え、化粧を施す間もそんなことをつらつらと考えていたら無性にライザール様に会いたくなった。

 

謎めいたあの琥珀色の瞳を見ればこの胸のざわめきも落ち着くだろうか。

 

ふとそう思った。