――!
「お目覚めくださいお嬢様」
侍女の呼びかけで気づいた時にはすでに夕方だった。
すいぶん寝ていたようだった。思ったより疲れがたまっていたのかもしれない。
「大浴場で汗をお流しください・・今夜は晩餐会ですからお仕度しませんと」
そうだったわね。
起きたばかりだけどお風呂に入ればすっきりするだろう。
貴族であっても蒸し風呂が一般的だったが、ここヒラ―ル宮には大浴場があった。
王の部屋からも行けるように二階の回廊から1階へと続く階段もあり利便性も追及されていた。
まとめ髪のままタイル張りの床の上でまずかけ湯をしてから風呂用のガウンを着たまま湯に浸かると生き返る心地がした。
シャナーサでは混浴も許されているけど、今は一人でこんな空間を使うなんてとても贅沢な状況だった。
王もお一人で入浴されるそうだから、打たせ湯などの他にも寛げるような配慮が随所にされているようだった。
周囲を囲む回廊をぐるりと見渡してから湯を出す石像へと視線を転じる。
どうやら豹のようだが、ついルトが連れていた黒豹を思い出してしまい懐かしさがこみ上げてしまう。
確か名前は・・
「そろそろ上がられませ・・のぼせてしまわれますよ」
思い出す前に侍女に促されて湯からあがった後、タイルの上に寝そべりながら香油で肌の手入れを施されながらも記憶の糸を辿る。