密偵をやっていたおかげといえるわね。

 

様々な国に潜入してその国の言語を巧みに使いこなし紛れなければならない以上、知識も教養も必須だった。

 

「また一つ共通点が見つかったようだな。お前が密偵である以上、話せないこともあるが婚約者としてならば歓迎しよう」

 

 

お互いにお一人様で文化や風習への関心が高く・・つまり知識欲が高いというところかしら。

 

「そういっていただけると嬉しいですわ。私も仕事で知りえたことは守秘義務がありますからたとえ王と言えどもお話しはできませんが、話せる範囲でならお答えしますから」

 

だって期日は1週間後ですもの。

 

レイラ様を探されないのならばなぜ私が婚約者の身代わりに抜擢されたのかという謎だってあった。

 

おそらく体面を保つためだろうが、それでも王が婚約破棄されるのならば私の役割もそこまでだった。

 

なのにこんな風に親密に過ごしてくださるなんて思わなかった。

 

貴方は私に何をお求めなの?

 

そんな風に感じながらも言葉にはしない。詮無き事だった。

 

そもそもレイラ様との婚約はすでに無効である以上、身代わりの私などにかまけている時間も惜しいのではないだろうか。

 

あれから少しだけ店主様がお話しくださったが、この度の婚姻はまだ若い王が地位を盤石のものにするための政略的な意味合いが強かったらしい。

 

けれど肝心の婚約者の女性はすでに出奔されてしまい、王も事情はご存じであるならば、新たな婚約者候補を募らねばならないはずだった。

 

アリ家ほどの大貴族でなくても王に娘を嫁がせれば安泰だと考える方々がいるはず。