「では遠慮なく・・・いただきますね」
まずはお茶から・・シナモンが効いた紅茶だった。
ほんの少しミルクを垂らしても美味しいけれどそのままいただくことにした。
カップを置き皿に盛られたビスケットを摘まむ。スパイスやナッツの風味が香ばしいいわね。またすぐに手を伸ばしたくなるやみつきになるような口溶けだった。
せっかくだから甘いお菓子とともに茶をいただきながら、なにかお話ししようかしら?
「ライザール様のご趣味はなんですか?」
本が多いし博識なのは確かだけれど、彼の人となりを知るきっかけが欲しかった。
ただいくら王が親しく接して下さってしたとしても微妙な話題は避けなければ。
すると茶を啜っていた王はカップを手にしたまま上機嫌で応えてくれた。
「狩りと言いたいところだが、あれは趣味というより王としての義務のようなものだしな・・趣味と実益を兼ねているのは他国の文化や風習を調査すること・・かな」
狩りは王族のたしなみだから当然としても、他国の文化や風習を調査するのがお好きだなんて・・・けれど意外ではなかった。
「わかりますわ・・・私も各国を回りますから知っておいた方がいいこともありますものね。各地の祭事や風習、グルメに至るまで興味はつきないですもの」
国が富んでからはとくに他国との交易や外交も盛んになったからより関心が高まったといえる。
「同意が得られて嬉しいぞ。ことにお前のような若い娘と話があうとは思わなかった。なかなか好奇心旺盛のようだ、けっこう」
それはそうだろう。特権階級の娘であっても教養は必要ないと考えるものが多いわが国においては私のような存在こそ稀有だった。