やはり店主様がおっしゃられたとおり、暗殺を恐れているのかもしれない。

 

それに王は女性関係を否定されたけれど、宮廷にはべる女達の中には王を慕うものもいるだろう。

 

私の存在を快く思わない方もいるかもしれないわ。

 

考えてみれば恋愛未経験の私には嫉妬やどろどろした感情とは無縁だった。

 

舞妖妃として活躍する私を妬むような踊り子仲間もいないし

・・いたって平和だったの。

 

安易に引き受けてしまったけれど、そう思えばやはり不安はあるわね。

 

「心配するな。ここに滞在している間お前に不快な想いはさせない」

 

琥珀色の瞳には孤高な王の誠実さがにじみ出ていた。

 

 

なにかしら。不思議だけれど信じられる気がするわ。

 

「はい」

 

だから素直に頷き返すとライザール王も微笑まれる。

 

初対面なはずなのに十年来の仲のような打ち解けた雰囲気だったからかもしれない。

 

それに・・やっぱり彼の琥珀色の瞳見つめられたら心が揺らいでしまいそうになる。

 

少なくとも今だけは安心してもいいかしら?

 

私らしく・・・あればいい?

 

密偵の仕事は様々で、時には身の危険を伴う任務だってあったけれど、こんな任務は初めてだったから・・

 

ただの身代わりのはずなのにまるで私自身が王の婚約者に選ばれたと錯覚してしまいそうになるほど、王が親しく接してくださるから勘違いしてしまいそうになるわ。

 

そんなはずないわね。

 

そんな風に言い聞かせながらもやはり安堵する自分がいた。