もっとも広大な我が国には砂漠だけでなくサバンナも広がっているしオアシスも点在しているのだけど、無計画に乗り込めば遭難は必至だから物見遊山で行ける場所ではなかった。体験済みだから確かよ。

 

燐帝国のような睡蓮が浮かんだ池や大河がある風景やルーガン王国のように広大な湖や滝がある風景とは異なる砂漠の国だからとても貴重な体験だわ。

 

 

「私は喧噪も嫌いじゃないが、時々無性に静寂の中に身を置きたくなるんだ」

 

それはおそらく王ならではの悩みなのだろう。

無理もないわどこに行くのも共が付き従い、注目の的なのだろうから。

 

「わかりますわ・・私も客商売ですから。もちろんお客様はありがたいですけれど、一人部屋でいる時間はやっぱりホッとできますから」

 

舞妖妃でも密偵でもなくただのシリーンでいられるひとときは私にとっては貴重だった。

 

「恋人はいないのか?」

 

――!

 

何気なさを装っていたがこれは慎重を期さねばならないかしら?

とはいえ私に動揺はなかった。少し情けなかったくらいね。

 

本来なら「ご想像にお任せします」と答えた方がいいのかもしれない。

 

でもなぜかこの時、私の口から出たのは・・・

 

「残念ながらいませんわ・・」

 

するとライザール王は複雑そうな顔をされた。

 

まあ、そうよね。喜べば角が立つし理由が気になってしまうもの。だけどやはり彼はどこか安堵したような様子だった。