「あれ?知らないのかいシリーン。我が国のハレムはとっくに閉鎖されてるんだよ。倹約家の王による経費節減もあるらしいけど、なんでも暗殺を恐れた王は風呂に入るのも寝所でもお一人でおられるそうだ。いや~僕と一緒だなんて親近感あるなあ」

 

店主様ったら

 

この方は女嫌いというわけでもなさそうなのに出会ってから今日に至るまでずっと独身だったし私が知る限りでも彼女がいたためしもなかった。だからといってもてないわけでもないのよね。肉欲をもたないのではないかと思えてしまうくらい不思議な方だった。

 

そりゃあ私だってそうだけど・・でも別に男性に興味がないわけじゃないわ

 

ただ初恋のルトが忘れられないだけよ。

 

だからこそ仮初とはいえ、尊敬するライザール王の婚約者の身代わりとして抜擢されたのは光栄である反面複雑だった。

 

だって私に恋なんてできないもの・・

 

もちろんライザール王から口説かれるかはわからないけれど、これまでも数々の名のある方達から言い寄られた身としては慎重になってしまうのはやむを得ないでしょう?

 

だけど心から愛する方でないとこの唇も身体も捧げることなんてできないわ。

 

――ルト、貴方はいったいどこにいるの?もう私のことなんて忘れてしまった?

 

そう思えばやはり切なかった。

 

喜びも悲しみも共有したあの夏、確かに私達の間には絆があったけれど・・

 

だけど私は無垢な子供でしかなかった。

 

恋愛話に花を咲かせる踊り子仲間をほんの少し羨ましく思いながらも、ルトを忘れられなくて恋もできず、プラトニックな想いを抱えたまま年を重ねてしまった私はそんなジレンマを抱えていたの。