密偵である前に一国民として偉大なライザール王を敬愛していた。

 

以前は貧しかったわが国が在位9年で富める国になったのはすべて辣腕なライザール王が果敢に改革を断行したおかげといっても過言ではなかった。

 

噂ではライザール王は三十路の偉丈夫だと聞くけれど・・

 

「あの方は確か独身だったはず」

 

ならばお相手の女性の調査かもしれないわね。

そんな風に思った矢先のことだった。

 

「そうなんだよ。実はこの度ライザール王が婚約されてね・・」

 

店主様が知っているなら話が早いとばかりにもみ手をしながら話し始めた。

 

あら、やはりそうなのね。王ともなるとさぞお相手もことかかないでしょうけど・・

 

それでも王妃となると話は別なのかしら?

どちらにせよめったな相手じゃないのは確かね。

 

「・・だからその逃げた婚約者の代わりを君に頼みたいんだよ」

 

――え?

 

「・・・今なんて?」

 

聞き間違えじゃないわよね!?素通りした店主様の言葉を反芻しながら再確認する私に店主様は邪気のない笑みでなんでもないことのように言った。

 

「だから逃げた婚約者の代わりをシリーンに頼みたいって言ったんだよ」

 

――!?

 

王の婚約者が逃げたのも驚いたけれど、まさか身代わりに私が選ばれたなんて。