密偵として活動していなければ出会えなかった方達がいた。
ヴィンス様もそのお一人だった。
ヴィンス様と出会ったのはライザール様と出会う前のことよ。
彼はまず私の外見を気に入り、そして行動を共にするうちに私の内面にも興味を示してくださった。
もちろん最初は戯れでしかなかったけれどね。
ルーガンの方だったから最初はもっと怖い方かと思っていたけれど、私自身ヴィンス様を先入観で見ていたのだと気づくことになった。
お傍で接するうちにヴィンス様は厳しいけれど責任感の強い真面目な方だということが私にもわかった。
多くを語らず自尊心が高く激高されやすい一面もあるから誤解されやすい方でもあったけれど、その実芯の強さと優しさも持ち合わせている誠実な方だったわ。
だけど私の心には決して忘れることのできない方がいた。
ヴィンス様に求愛された時もそう。
また会えるかもわからない、琥珀色の瞳のルトへの想いを諦めきれなかったのが敗因だなんてとてもいえないわね。
依頼を達成してルーガンを去る時もヴィンス様は未練を見せてくれて、私も少しだけ心が揺らいだわ。
だけど気持ちを簡単に変えられずに縁がなかったのだと思うことにした。
あと何度こんな思いをすることになるのかしらって自分の頑固さに呆れたわ。
欠点があったとしてもお互い様だったし、それぞれに魅惑的な男性が現れては求愛されるなんて誘惑の試練はそれからも途切れることはなかった。