忙しい方だけに砂漠のオアシスから戻ったのはそれからすぐ後だったけれど、素敵な体験だったわ。
二人で眺めた夜明けの空は希望に満ち溢れていて感動をもたらすものだった。
あの場所で眠るカルゥーもどうか私達を見守っていてね。
カルゥーとライザール様が救ってくれた命だもの貴方達の恩に報いるわ。
宮殿に戻ったライザール様は休む間もなく会議に出席され、その場で私との婚約を大々的に発表された。
初めての夜を迎えてしばしの休息の後夜未明に宮殿を出立して墓参りをして戻ってきたのは朝だったからさすがにきつかったけれど貴重な体験ができたわね。
「紹介は夜だからそれまで体を休めると言い」
今回ばかりは労ってくださるライザール様のお言葉に甘えることにした。
女にだってなにかと準備は必要ですからね、目に隈なんて目も当てられないでしょう?
砂だらけもいただけないもの。お風呂に入ってしっかり睡眠もとらせていただいたわ。おかげさまで夜になるころにはいつも通りだった。
紹介はパーティの席だった。結婚式の日取りも改めて公式に発表された。
本当なら今すぐにでも結婚したいけれど、列席者との兼ね合いもあるし王だけに準備は万全でなくてはならなかったからしかたないわね。
もちろん例の婚約者騒ぎを隠れ蓑に水面下では着々と準備が進められていたから、これだけ急な取り決めにも対応できたのだろう。ライザール様はその時から私との結婚を想定して準備されていた。
心配なのは貴族の方々の反応だったけれど、一時婚約者として振舞っていた私を覚えていた方もいたでしょうけど、王自ら堂々と釈明されたから皆さまも「アリ家の娘」で「婚約者」と納得されたようだった。
形式が整っており、王が結婚に前向きになったこと、そしてなによりも「アリ家」の後ろ盾があることが絶大な効果をもたらしたようだった。
やはり店主様がこの国を影で牛耳っているという話は本当なのかも。
そう思えてしまうくらい皆の態度は様変わりしたから。
だからといってライザール様は有能な方だし傀儡の王ではないわよ。
あの方はなるべくして王になった方ですもの。
シャナーサ国民を導く空に輝く希望の星のような方だ。
そして私の愛しい方だもの・・・