「元気そうだなシリーン、会いたかったぞ」
まあ、嬉しいことをおっしゃってくださるのね。
「私もお会いできて光栄ですわ、ライザール様ようこそおいでくださいました」
さりげなく私の手を取り接吻をされるライザール様の目は狙いを定めた肉食獣のように輝きを帯びていた。
トクン
クライアントとして出会った方だったけど、偽りとはいえ「婚約者」として寝食を共にした1週間は甘くて切ない思い出だった。
若くて美丈夫なライザール様は婚約を破棄されてからは今もって独身を貫いていたから、世の女性たちは悩ましい溜息をつき眠れぬ夜を過ごしていることでしょうね。
「ライザール王、お知り合いだったか・・世間は狭いな。まあ国内随一の踊り子でもある密偵をご存じでも不思議はないか」
すぐ隣りからヴィンス様が会話に入ってこられた。
「ご無沙汰しておりますヴィンス様ご健勝そうでなによりですわ。・・それから皇驪様も・・弟君の希驪様はご健在でいらっしゃいますか?」
王の手前もあるからあえて知り合いであることを明らかにしておく。
腕を組み軽く頷くヴィンス様に笑顔を返してから相変わらず浮世離れした皇驪様にもご挨拶すると、夢心地だったのか「は~~
」と悩まし気なため息が返ってきた。
まあだいたい何を考えておられるかわかってしまうわね。