アンチ二重スパイルート ライザール様オンリーラブ編
ジェミルとのことがあったのはわかっていたが、私はライザール様の誘惑に抗うことができなかった。
これまで2回ライザール様に抱かれていた。
一度目はジェミルを助けるためにライザール様を誘惑してそうなった。
結局ジェミルは無事だったけれどその時の感覚が忘れがたくて
二度目の誘惑を受け入れてしまい身も心もライザール様の虜になってしまった。
私の処女を奪ったのはジェミルだったけれど、だけどあの行為に恋愛感情はなかったのだと今ならわかる。あれはただの不幸な事故だった。
ジェミルは私を大切にしてくれたし、私を想ってくれたけれどそれでも私が欲しいのは彼じゃなかった。
金梅酒が見せた一夜の悪夢でしかなかったし、今もって弟同然に思っていたジェミルと一線を越えてしまった気まずさしかなかったのだ。
女としても満たされなかった心の隙にライザール様は巧みに忍び寄り私の全てを奪い去った
別々にとはいえ二人の男を受け入れてしまうなんてふしだらな自分に嫌気がさしてしまう。
きっとライザール様だってそう思われているだろう。
ライザール様を拒めなかったのはなによりも大切だった「ルト」だったからだけど、今の彼は王でもあるからその心の全てがわかるわけではなかった。だからルトを慕う気持ちはあっても不安は拭えない。
密偵の私を尋問するためにライザール様がした仕打ちにも傷ついたし、正気を失ったせいでジェミルを拒むことができなかったことを悔やんでもなかったことにはできなかった。
あの直後こそ彼に会うのは苦しかったけれど、ライザール様は謝ってくれたし「シリーン」である私を愛しいと言ってくださった。
そんなことですべて帳消しになるわけではなかったけれど、葛藤はあってもライザール様を拒むことはもうできそうになかった。
女の体を知り尽くしたライザール様の手管により開花した私は輝いていた。
あの快楽を得るためにジェミルを何度でも裏切ってしまえたのだ。罪悪感もなかった。
確かに一度だけジェミルに抱かれたけれど、別に彼の女になったわけじゃない。
だけどライザール様は私が愛しているのはジェミルだと思っているようだったし、ジェミルも私を独占したいと思っているようだった。
私の気持ちを置き去り争う男達が疎ましいとさえ思うのに、結局私は心のどこかでライザール様が私を選びジェミルから略奪してくれないかと期待していたのだ。