ジェミルの女と認識されながら2度もライザール様に抱かれてしまった私を、ライザール様はどう思われているのだろうか。

 

私を愛しいと言ってくださったけれど本心かはわからない。

ただ追憶の彼方の汚れない乙女だった私を諦めきれないでいるだけなのかもしれない。

 

そう思えば苦しかった。もはやあの頃の無垢な少女には戻れないのはわかっていたから。

 

ジェミルに抱かれ喪失して、ライザール様に抱かれて私は女になってしまった。

 

それに問題はもっと複雑だった。

 

ライザール様は本物の王ではなく、王は別の人物だった。

そしてその真の王の世継ぎこそジェミルだったなんて・・

 

偽物の王のライザール様とその義理の息子のジェミルと関係を持ったことは私の心の負担になっていた。

 

もし周囲に知られてしまえば身の破滅だった。

 

厳格な規律のあるわが国で許されることではなかった。

 

だからこそ少しでも辛い現実を忘れたくてより一層ライザール様との情事に溺れていたのかもしれない。

 

この時の私はもはや密偵ではなく浅ましいまでにただの女でしかなかった。

 

ライザール様との刹那の時間がもたらす安らぎに包まれて幸せだったから後悔はなかった。

 

けれどそんな関係がいつまでも続くはずはなかった。

 

言い出せないままジェミルとの結婚の話まで持ち上がってしまい私は心身ともに疲れきり追い詰められていた。察してくれないジェミルに対しても苛立ちは募っていた。

 

かねてから私とライザール様との関係を疑っていたジェミルについに知られてしまったのだ。

 

 

束の間の癒しを欲するままにライザール様の寝台の上で抱き合いながらキスをしていた時のことだった。

 

姿の見えない私を探してやってきたジェミルに現場を押えられてしまったのだ。

 

ジェミルの顔に浮かんだ怒気に一瞬で血の気が引いてしまう。

 

咄嗟に取り繕いたくてライザール様を押しのけて、身づくろいをしたが手遅れだった。穏便に済ませることはできそうにないのは誰の目にも明らかだった。

 

でも私が怖くて見れなかったのはライザール様の顔だった。

 

保身のための私の行動はきっと彼を傷つけたはずだから。

 

――ごめんなさいライザール様!!私ったらなんてこと・・

 

ジェミルに対してではなくライザール様に心の中でひたすら詫びる。