今更言ってもすべてが手遅れだったし私だって貴方を諦めきれなくて水に流そうと決めていたのに・・

 

「シリーン・・・ごめん」

 

拒まれたジェミルがすごすごと出ていき二人きりになった途端、

ライザール様が私を腕の中に込めたまま重い溜息をついた。

 

吐息が敏感なうなじにかかりびくりと身を震わせてしまう。

 

「まさかお前が奴を拒むとはな・・割り込んだのは私だったはずだが違ったとは・・まいった」

 

 

振り向いてみたらライザール様の顔には苦悩が浮かんでいた。

ジェミルとの仲を知りながら関係を持った負い目があるということなのだろう。

 

「ジェミルとのことは言わないで!私が望んだことじゃないもの!」

 

それが私の本音だったが、ライザール様にとっては突きつけられた残酷な真実だったようだ。

 

「くそっ・・むざむざ他の男にお前を奪わせた『俺』は愚かな男だったようだ。王ではなく道化だなまるで・・・偽物の私には相応しい役回りだ」

 

 

それが本当なら・・

 

「ではわざとではないの?・・・王族だからジェミルを私にけし掛けたのかと・・」

 

私の言葉にライザール様は瞠目された。

 

「馬鹿な・・いやだが否定はできないか。どこかにそんな思いがあったのかもしれない」

 

やはり・・そうなのね

 

ショックだったけれど、きっと不安定な立場で葛藤されたライザール様の方がより苦しかったのかもしれない。

 

ジェミルとの婚約の話はライザール様も耳にされただろうから。

もしかすると今度で終わりにするつもりだったのかもしれない。

 

私達の心を置き去りにしてどんどん変化する周囲の状況に流されて飲み込まれてしまう予感に震える。

 

だからといって私の気持ちを無視してジェミルと共有しようとしたのはやはり許せなかった。