「もう二度とあんなことはしないと誓って!私が欲しいのは愛しているのは貴方だけなの!貴方は私にとって今も昔も大切な方よ?

王であってもなくても関係ないわ!それともジェミルに抱かれて純潔を失った私ではもう愛せない?」

 

純潔の花嫁を娶ることはこの国では当たり前のことだった。

 

ましてや王妃になどなれる立場ではなかった。

 

踊り子で密偵の私から愛をとれば何が残るだろうか?

 

そこにあるのは果てしない渇望と無残な夢の残骸があるだけ。

 

そんなの嫌!

 

「泣かないでくれシリーン・・お前に泣かれると俺はどうしていいかわからなくなる」

 

 

唇で涙を拭われて初めて自分が泣いていたことに気づく。

 

それは愛を失った悲しみの涙だった。

 

ライザール様の重大な秘密を知ってしまった以上、私は彼にとってやっかいの種でしかなかった。

 

ああ・・あの頃に戻れたら・・

 

砂漠でさ迷っていて砂嵐に見舞われて九死に一生を得たが、ライザール様と出会いその後の一か月は人生で唯一輝いていたまさに至福の時だった。

 

あれほど心が満たされたことはかつてなかった。

私に喜びも悲しみもすべて与えたのはライザール様だけだった。

 

こんな苦しいのは嫌・・・すべてを忘れてしまえたらどんなに楽か・・

 

そう思うのに大切なルトをもう一度失えばもう抜け殻同然だった。

 

「すまない・・お前を苦しめた私を許して欲しい・・ずっと忘れることができなくて町中で同じ年ごろの娘を見るたびにお前の面影を探した。だが長年の夢がかないやっと再会できたのに私はお前を傷つけてしまった。愛しているシリーン・・お前以上に愛した女はいない。だがそれでも偽物の私よりジェミルとの方が幸せになれる。そう思い今夜で終わらせるつもりだったがうまくいかないものだな」

 

バカ!どうしてそうなるのよ!卑怯だわ!

 

ずるい大人の言い訳に心が悲鳴をあげる。

 

愛すればこそ幸せを祈り手放すなんて・・そんなのただの自己満足じゃない!

 

私の気持ちはどうなるのよ!