嫌!ルトを忘れるなんて絶対嫌よ!!他は全部忘れてもいい!
だからお願いルトの思い出だけは奪わないで!!
たとえ悲しい決別だったとしても幸せだった希望に満ち溢れたあの束の間の時間は私にとってかけがえのない宝物だったから・・
二度と店主様に奪われたくなかった。
その時砂漠の中に人影を見た気がした・・・
ああ‥ルト・・そこにいたのね・・・会いたかった
それは残酷な砂漠が見せた幻でしかなかったけれど私は追い求めるようにかけた。
ほの暗い洞窟から炎天下の砂漠に出たからくらくらとする。
火傷しそうな熱砂に足を取られそうになりながら必死で駆けた。
「『シリーン』・・逃げても無駄だよ」
おぞましいまでに柔らかな店主様の声が執拗に追いかけてくる。
そしてついに捕まり足をもつれさせた私達は共に坂を大量の砂を巻き散らしながら転がり落ちた。
回転する風景が走馬灯に見えて一瞬気が遠のいた。
気づいた時私は砂に埋もれていた。
辺りを見回したら店主様が驚愕の表情を浮かべて顔まで砂に飲まれていた。
「嘘だ!僕が死ぬはずなんてない!!僕は・・不老不死にな・・る・・・」
恐慌をきたし喚く口の中にも大量の流砂が入り込みあっという間にのまれてしまった。
危機に瀕した密偵の性で対処法を思い出すことができたおかげで暴れなかったことが幸いしたのか体重が軽い私はまだ深くはまっていなかった。
――良かったこれなら抜け出せそう・・
慌てず騒がず体を横にして足を表面になんとか出した後ぬかるみにとられてすっかり重くなった服を引きずるように流砂からの決死の脱出に成功した。
はあはあはあ・・・私・・まだ生きてる・・・
それでもかなりの気力と体力が奪われてしまったようだ。
注当初はライザール様が鞭で引きあげる救出案だったけど、ベア・グリルス氏の流砂から脱出動画見てやめました~危ないから~真似しちゃダメだぞ!