彼の触れ方も焦らしながらも追い立てようとした先ほどとは打って変わり私の反応を窺いながらも的確に快感を引き出してゆく。

 

こんな触れ方もできる方なのね・・

 

思いのほか優しい触れ合いにほだされてしまいそうになる。

 

これまで情に溺れたことなどなかったけれどライザール様とは長い付き合いになりそうだから本気にならないようにセーブする必要があるかもしれない。

 

有無を言わせぬ圧倒的なカリスマ性を持ち他者を魅了してすべてを支配しようとする王の色香に惑えば私はただの「女」になってしまい「密偵」は続けられないもの。

 

・・貴方の気持ちは今はまだわからない、でも今だけは貴方に溺れもいいでしょう?

 

この仕事を引き受けた時点でライザール様を誘惑するのは想定内だったけど、今は仕事モードじゃないからただのシリーンとしてこの甘美なひと時を楽しむことにするわ。

 

慣れた私であってもライザール様の全てを受け止めるのはきつかったけれどいずれ私なしではいられなくしてあげる。

 

 

「そうだ、お前の名はなんという?」

 

私に興味をもってくださるのね。

 

「シリーンとお呼びくださると嬉しいわ」

 

だからこそ彼にだけは本名を打ち明けた。

 

まだ本気の恋を知らずに王族の方との火遊びに慣れた私と、

かつて裏切りに合い愛を失ったライザール様との先の見えない恋の駆け引きはこうして始まったのだ。

 

 

アラビアンナイト第2夜(終)