「来たか・・・生憎と私は無事だ・・残念だったな」

 

 

あら可愛くないおっしゃりようね。やはり私は暗殺者と共謀していると思われているらしい。

 

「ライザール様ご無事でなによりでした。怪我をされたのですね」

 

王の当てつけをあっさりと受け流す間もライザール様の腕から溢れる血に自然と目が行ってしまう。

 

ああ・・彼の貴重な血だけど・・・

 

でも私が必要なのは性的に興奮したライザール様の血だった。

 

この2日間彼が女を抱いていなければあれはただの怪我でしかなかった。

 

――他の方を抱いてないわよね?ライザール様

 

二日間の空白を確かめる術はないができることはある。

 

「手当が必要ならば私にさせていただけませんか?」

 

誘惑するように甘く囁くのではなく、怪我人を放っておけないからこそ良心から出た言葉だった。

 

トイの手当をした時にも使った手持ちの救急キットも持参してきた。

 

あえて言葉を重ねずにライザール様の目を見つめることしばし、彼は手当を受け入れてくれた。

 

「・・・ならば頼む」

 

背後でハサン様が懐に手を忍ばせたのが見えたが動じずにライザール様の手当を続けた。

 

―よかった傷は思ったより浅いみたいだわ・・

 

自然と安堵の笑みがこぼれる。

 

出血量もたいしたことはなかったが傷跡は残ってしまうだろう。

 

慣れた手つきで手当てをする私をハサン様をはじめライザール様も感心したふうに見ておられた。

 

「すまない・・・助かった」

 

手当を終えた私にライザール様が礼を言われる。

 

「いえ、お大事になさってください」

 

礼儀を弁えた男は好きよ。身分の高い方の中にもこんな方もいるのね・・

 

ライザール様は私だけではなくトイにも礼を尽くしていた。