――ああ、こうしてはいられないわ・・あの方はご無事なの!?
私の心配は・・・
密偵としてと女としてと両方だわ
もしライザール様になにかあったら・・
けれど部屋の入り口は衛兵が封鎖していて阻まれてしまう。
「申し訳ありませんがお通しでできません」
――こんな時に!
ジレンマに苛立つ心を落ち着かせていたら、廊下の向こうからハサン様がやってきた。
「お通ししていい・・王がお会いになられるそうだ。お嬢さん・・同行していただきますよ」
!?
「王はご無事なのですか!?」
なんとしても無事を確かめたくて詰め寄ると、ハサン様は冷めた目で私を見つめられた。
――!
ゾクリと総毛立つ心地がした。疑われているのだろうか?
「ええ・・ご無事ですよ・・嬉しいですか?」
ニコリと笑む気配がしたが私の顔は強張ったままだった。
この方本当に何者なのかしら?物騒な方だわ・・
人当りの良い方だし本来は殺気を気取られることもないのではないかと思えてならない。
むしろ私をけん制するためにわざと殺気を放っているのだろう。
なんとか気を取り直して、頷き返す。
「もちろん嬉しいですわ・・ではご案内していただけますか?」
――ライザール様がご無事で本当に良かった・・
――彼が無事でないと血が採れないものね
女としての私と密偵としての私は共に彼の無事を願っていたが、見返りは求めない愛と私利私欲な欲望とが複雑に絡み合っていた。