「・・・どうだかな。だがお前は考え違いをしているぞ。アリ家にも損はないだろうが、そもそもこの結婚は大臣達を黙らせるためだけのものだ。

 

物事を円滑に進めるために必要だと判じたまで。実際相手は誰でもよかった・・・扱いやすい女なら誰でもな・・だから大勢の候補の中から『レイラ殿』を選んだ」

 

 

彼は本当に「レイラ」様に言っているのだろうか?なんだか私に言い聞かせているように聞こえてならなかった。

 

それはさておき家の都合で取り決めた婚姻とはいえあまりにも理不尽な言い分だった。

 

そこにあるのは無情なまでの利害と有無を言わさぬ忖度だけだった。

 

レイラ様を選んだ後もライザール王は結局一度も顔合わせに来なかったのだという。

 

徹底した無関心の理由が今の彼の言葉で納得いってしまった。

 

まさかそんな理由で結婚をされようとしていたなんて・・

なんてことなの・・ひどすぎるわ

 

女にとって結婚は一生を左右する大事だというのに・・・

 

ライザール王の身分を考慮すれば多数の妃候補がいてもおかしくはないし、そもそもわが国は一夫多妻だった。

 

けれどライザール王はハレムを閉鎖したことで公然と王自ら一夫多妻を拒まれたのだともいえる。

 

それだって恐らく「妻」の機嫌取りに時間を割くのが面倒だからとしか思えなかった。

 

野心はあってもすべて己の理想とする国造りのためのものだった。

 

つまり重度の仕事人間の彼がやっと妻を娶ることになった理由もやはり円滑な人間関係を維持するためだけのものだった。

 

・・・なんて人なのかしら

 

「では貴方は女に何も求めない・・とおっしゃるの?」

 

心で寄り添うこともなく、信頼関係のないままで構わないと?

 

情に溢れた方だと思ったのに・・貴方に心はないというの?

 

ライザール様はフッと笑んだ後、あの強い眼差しで睨み据えた。

 

「では『お前』に何ができると?自慢の体で私を癒してくれるとでも?・・なあ、『婚約者殿』?」

 

 

やはり彼は・・・勘付いている?

挑発され侮蔑されながらも私は冷静だった。

 

煽ろうとしても無駄よ・・ごまかされないわ。それに彼の目は言葉とは裏腹に欲望に濡れていないもの。

 

「貴方は女性がお嫌いなのね・・憎んでいらっしゃるみたいだわ」

 

長く独身だったのは「遊び人」か「人間不信」かと勘繰ったけれど、ライザール王は間違いなく後者だった。