なんだかひどく罪悪感を覚えながら、ちらりとライザール様の横顔を見つめる。

 

離れているといってもほんの2メートルくらいだから湯気でけぶる彼の表情までわかってしまう。

 

…聞いてみようかしら?

 

「ねえ、先ほどのトイのこと・・どうされるつもりなの?」

 

わざと「トイ」の名を出したが、ライザール様はきちんとトイの名を心にとめていた。

 

それは彼が己の名声を高めるための美談ではなく、トイを一人の民としてその苦境を正しく認識しているからに思えてならなかった。

 

「ああ・・・トイのことは私も考えている。当座の支援と長期的な支援が必要だろうな。当座の支援としてはまずは少女失踪事件の調査と解決、それからトイや仲間たちには情報と引き換えに早急な物資の支給、・・・施しではなく労働による対価を与えた方がいい。

 

それから長期的な支援に関してだが・・・そもそも孤児を放置するのが問題である以上国として問題に取り組む必要があるな。

 

彼らには文盲も多いと聞くから教育は必須だろう。発展途上のわが国においては身分制度があり自由が制限されてはいるがいずれ能力に見合った職につけるように改革が必要だ」

 

驚いた・・本当に考えていられたのね

 

それも恐らくずっと以前から・・・

 

けれどいくら立派でも実現できなければ意味がない。

 

「ではそれが実現できると?アリ家の支援を見越してのことですか?」

 

レイラ様が駆け落ちしたことはご本人の自由だという考えは変わらないし政略結婚の是非もこの際抜きにしたとしても、けれどそれでも罪悪感を覚えた。

 

だってそうでしょう?ライザール様の野心はけっして私利私欲なものではなかった。

 

この国を少しでも良くするために国民を思うからこその改革をしようとされているのだから。

 

国民を顧みない私欲にまみれた貴族達と対立したのもそのせいだった。

 

けれどレイラ様は戻られないし、この婚姻が成立することはない。

 

アリ家の支援のないまま彼は一人で理想を実現するために奔走されなければならない。

 

この仕事を受けた時は、店主様のために王に近づく機会を得たくらいにしか思えなかったけれど、今は後悔の方が強かった。

 

私のしたことで王の邪魔をすることになってしまったなんて・・