砂漠の夜は冷えるから寒さを感じて身を震わせる私に気づいたのかライザール様がこちらを窺う。
「冷えたなら熱いに湯に浸かるがいい・・・案内してやろう」
王に先導されて辿り着いたのは大浴場だった。
「・・まあ」
庶民感覚の私には目の前の光景が信じられなかった。
確かにルーガンには天然の温泉があるし燐でも豪華な王族専用の金の浴槽を見かけたけれどまさか砂漠の国のシャナーサでこれほど潤沢に湯をたたえた大浴場を見ることになるなんて
・・紺青の唐草模様のタイル張りの床も素晴らしかった。
列柱に囲まれた二階の回廊へと続いており、恐らく王の部屋から直行できるのだろう。
豹を象った像の口からは湯が注がれていた。
まさに感動ものだった。
それだけ水は貴重だし、そもそも庶民は公共の蒸し風呂に入るのが一般的だった。
跪いて湯加減をみたら、少し温めの良い湯加減だった。
大貴族の姫であるレイラ様でも専用の湯船に湯を張るくらいがせいぜいだろう。
驚いていたらライザール王が服を脱ぎだした。
まさか一緒に入る気?ああ・・・でも・・
確かにシャナーサでは混浴も認められていた。
寒かったからこそよりライザール様の体温が心地よかったけれど、冷えたのは彼もですものね