ああ・・・ダメ上手く伝わらないわ・・

 

不純な動機があるから後ろめたさがあって用心深い彼に勘繰られてしまったようだ。

 

それでも少しでも伝えたくて彼の体をきゅっと抱きしめたら彼の体が強張った。

 

 

あの瞬間王に民として女としてすがっていたのは私だったのかもしれない。

 

だけどライザール様からしたら私の行動は理解不能で謎めいていたのでしょうね。

 

したたかな棘を持ち誘惑する一方で弱さや時には強さを垣間見せて感情を揺らがせる私を量りかねていた。

 

思えば「レイラ」だった頃は常にこんな心境だった気がする。

 

私自身「女」として彼に寄り添いたい気持ちと「密偵」として彼を利用して翻弄しようとする気持ちのせめぎ合いだった。

 

本当の恋人だったら少しくらい納得いかなくてもキスで仲直りできたかもしれないけれど、政略的にお膳立てされた上での偽りの婚約者では利害の一致も感情の共感も難しかった。

 

すでに私の中で「レイラ」でいることは限りなく苦痛になっていたが、仕事である以上投げ出すわけにはいかなかった。

 

だって店主様の命がかかっているもの。

 

それに「レイラ」でなければライザール様の傍に侍ることは許されないでしょう?

 

一夜だけでも侍りたいと思ったのは取り消すわ・・・

 

王は孤独なものだって知っていたけれど・・なんだか彼のこと放っておけないから。

 

思えばすでにこの時から私はライザール様に「女」として惹かれていたのでしょうね。

 

その僅かな変化が私を彼の元に留めて密偵としての感覚を狂わせていたのだった。