ことさら煽るつもりはなくて、すがるような気持から出てしまった言葉だった。
「言ってくださいませ・・貴方の野心の足掛かりになれる『王妃に相応しい女』であると・・そうでしょう?ライザール王」
貴方が選ぶ現実から目をそらさないで!
私の言葉に王は瞠目されたけれど・・固く結んだ唇にはいつものシニカルな笑みは浮かんでいいなかった。
しばしの逡巡の後、ライザール王は応える。
「・・ああ・・・確かに『レイラ殿』は『王妃には相応しくない女』のようだ。だが私は野心を捨てることはできない。」
強引に物事を推し進める王ならではの言葉だった。
不器用な人・・・軋轢をものともせずに信条を貫こうとされるなんて・・
けれどそれは間違いなく貴方の心身を蝕む茨の道だわ・・
王が「レイラ殿」は王妃に相応しくないと言ったのはやはりとても意味深だった。
王とて密偵を方々に放ち貴族たちを監視していてもおかしくはない。
ならばアリ家の実情も気づいておられるかも・・・
彼の言葉はとうてい受け入れ難かったけれど、私がその場を立ち去ることはなかった。
それに私は「レイラ」じゃないから心は痛まないもの。
むしろ自分の選んだ道の険しさを知りながら、それでも諦めきれないと言い放つ彼の背負った重圧や伴う孤独がひしひしと伝わってきてしまって放っておけなかった。
ライザール様には貧民の苦しみは分からないかもしれなかったが、私にも王だけが背負う苦悩はわからない。
でもだからこそせめて心だけでも寄り添いたいと思ってしまった。
彼の目は傍にいて欲しいと望んでいたし、なによりも彼の本音を知りたいと望んだのは私なのだから・・・
だから少しだけ歩み寄ることにする。
「ごめんなさい・・言いすぎました。貴方に相応しい女になれるよう致しますからお傍にいてもいいでしょう?」
私がそうしたかったし、もちろん仕事を忘れたわけじゃないわ。
ターゲットに嫌われてしまったら元も子もないし、できることなら強引なやり方で彼を傷つけてはいけないと感じたからだ。
「好きにするがいい」
殊勝な私の態度にライザール様は忖度を感じたのかどこかなげやりな態度だった。