するとグ~ッとトイの腹が鳴った。
聞かずとも何も食べてないのは明らかだった。
厨房でなにか見繕ってもよかったけれど・・たぶんそれはしてはいけないのだろう。
お金を渡すのもダメだ。金は労働で得るべきものだからだ・・
それにこんな幼い子供が分不相応な金を手にしたら悪い大人に目をつけられて食い物にされてしまう可能性すらあった。
小金目当ての輩に襲われて命を落とす可能性だって・・
一番いいのはやっぱり現物支給ね。
そうだわ!
腹の足しにはならないけれど栄養価はある高級ドライフルーツの入った包みを手渡す。
何を隠そう私のおやつよ。小腹が減った時に食べようと思って用意しておいたのよね。
トイとアスラの分くらいしかないけれど。
「これを・・・俺に?・・・ありがと」
施しだと思うかもしれない。
でもどうか私の気持ちを受け取ってちょうだい。
「ここまで来てちゃんと自分の意見を言えて立派だったわ・・」
それは簡単なようでいてとても勇気のいることだった。
けれどトイは大人びた顔で淡々と言う。
「どうかな・・王は聞いてくれたけど・・追い払いたいだけかもしれないだろう?俺らはいつだってやっかいものだし・・・後回しにされて・・そのうち気づいたら死んじまうんだ」
こんな幼い身ですでに立ち位置を正確に知るほど追い詰められているトイが哀れだった。
まだ心に希望を失っていないけれど・・期待が裏切られるたびに彼らは徐々に心を失っていくのだ。
でもまだ・・・今ならまだ間に合うわ・・・
「ライザール様ならきっと力になってくださるわ・・だってあの方はこの国の王ですもの。それに貴方にだってまだできることはあるでしょう?お姉さんを守ってあげて。そしてなにがあってもけっして道をそれてはダメよ?いい?」
堕ちるのは簡単だけれど這い上がるのは限りなく難しい・・
この国では特にね・・