私は今23歳だけれど私の年では皆大抵結婚してるし子もいるわ。

 

でも少なくともライザール様が大人の女を好まれる方でよかったわ、ホント。

 

少し年上の方だけれど、そういう意味では独身だったライザール様もわが国では稀有な方なのかもしれないわね。

 

「ですが王には素敵な踊り子がいらっしゃるでしょう?いやはや先ほどの踊りは素晴らしかったですぞ?レイラ様」

 

 

あ、私のことね。

 

「嬉しいですわ・・でも王がリードしてくださったからですわ」

 

追従もあったけれど、実際のところ彼のリードは完璧だった。

気になる異性と共に踊るのは抱き合うのと同等の官能と興奮をもたらすものだった。

 

踊りの上手い男に床下手はいないでしょう?

あれも一種の呼吸法だし。タイミングって大事よ。

 

「謙遜しなくてよい。私も久々に踊ったが楽しめた」

 

お褒めいただいたけれどお世辞ではないようで一安心。

あと得意なのはなにかしらね・・狩りとか・・

 

思わず腰に差した鞭に目が行く。

物騒な武器は彼にはとてもしっくりきた。

 

そう思った時だった。

 

突如不穏な気配を察知して反射的に顔を向けたら、いつのまにか食卓に毒蛇が忍び寄っていた。

 

!?

 

シャナーサ王家のシンボルは蛇だし砂漠の国だからそこら中に蛇はいるけれど、だからといって食卓にブラックマンバが出るのはもはや偶然とはいえなかった。

 

 

思わず凍り付いてしまう。密偵としてあらゆる毒に耐性はあるとはいえブラックマンバは別格だった。

 

店主様なら血清をもっていらっしゃるかもしれないけれど・・

冷蔵設備が必要だけに生憎と持ち歩いていない。