その後・・晩餐会場に移動して共に夕食をとった。

 

さすが婚約披露の場だけあって豪勢な食事が供された。

 

様々な肉が並び・・メインはラクダ肉よ。羊肉や野鳥の肉もあるわね。

 

豆の煮込みやチーズやパンがずらりと並んでいた。

 

ガラスの器に新鮮なフルーツもどっさり盛られていた。

 

たわわな大粒の葡萄に心惹かれ一房手に取り摘まみながら会話に興じる。

 

壁の花ってタイプじゃないもの。

 

こういう顔合わせの場は人間関係や力関係を見極める情報を収集できる重要な場だった。

 

そのためならいくらでも愛想よく笑顔を振りまくわよ。

踊り子で培った営業力やリップサービスを味わいなさい。

 

おしゃれと男にしか関心ないふりをしながらも聞き耳を立てる。

王宮に来れる機会など滅多にないのだから。

 

数人の男達が懲りずに私に色目を使ったけれど、照れたふりしてやり過ごした。

 

そうそう食事といえばさすが王宮だけに王の傍にはお毒見役が付き従っていたのよ。

 

私は用心しながらもどのお料理も一通りいただいた。

 

同じものが供されなくても味や料理の種類は覚えておいて損はないもの。

 

通常か異常か見極めるためには・・・ね。

 

それにしても美味だったけどあれが毎日だと思うと気が重いわね。

確実に太ってしまいそう・・・やっぱり早めに切り上げて帰りたいな。

 

王は鷹揚な態度で召し上がっていたけれど、その冷静な眼差しは全体を常に見渡していたようだった。

 

残念ながら皆笑顔の下で何を考えているのかわからない連中ばかりだったからしかたないのでしょう。

 

未来のシャナーサ王妃にすら色目を使う連中だもの本当にろくでもないわ。

 

王様業も楽じゃないようね。

 

私の知る王族方はもっと気楽に構えている方達ばかりだったから。

 

もっとも隣国のヴィンス王も内乱の折には長らく苦楽を共にした近習の裏切りにあいさんざんなめにあわれたけれど。

 

クーデターの主犯格だったテオドールはヴィンス王の乳兄弟だったのだから。

 

ヴィンスさまはテオの裏切りに気づかないほど信頼されていたというのに・・・その信頼を裏切り踏みにじるだなんて

 

・・・心の闇を抱えたテオがなにも特別だというわけではない。

誰しも持っているコンプレックスや些細なすれ違いが肥大化して欲望に飲み込まれてしまっただけだった。

 

逆説的だけど親しいからこそ許せない、受け入れがたいという感情はわからなくはないわね。

 

あれはその結果に起きた惨事だった。