気まずい場の空気を読んだのか宮廷楽師が軽快な曲を演奏する。

 

フロアで踊れるようね。

 

シャナーサにも公式の場で男女で踊ることはあるから気分転換に誘ってみようかしら?

 

「ねえ・・ライザール様・・私踊りたいですわ」

 

これはあくまでもライザール王の婚約披露宴だから私を見せびらかす場でもある以上、踊りでアピールできるならそれに越したことはないはず。

 

本当ならライザール王から誘っていただきたかったけれど、不機嫌な彼にはこちらから積極的にお誘いした方が良さそうだし、

先ほどの私の発言で気分を害されたなら償いをしなくては。

 

「ああ・・・わかった」

 

ライザール王は逡巡されることもなく即お誘いを受けてくださった。

 

やはり彼は冷静な方だわ。怒気が強い方でもあるけれど、何が重要か即断即決できる判断力を持たれた方だった。

 

 

ルーガンやクライデルのような踊りとはまた少し違うけれど、対面して対の踊りを踊るうちに気分が上がってくる。

 

私の手をとった彼の掌は大きくてがっしりとしていて血管の浮き出た手の甲や骨太の指が私の細い指に絡まった時、冷やりとした感触に肌がゾクリとした。

 

なんというか官能を刺激する感触だったの。

男の体の中でも手は特に好きなパーツよ?

 

あの指で敏感な素肌に触れられたらと思うと欲望がたかまってしまったわ。

 

間近で感じた彼の体温や体臭はとても好ましくて

・・レイラ様はもったいないことをしたかもしれないわね。

 

一夜だけなら喜んで閨に侍っても構わないわ。

楽しめそうですもの。

 

こんなに魅惑的な男なら相手に困ることもないでしょうに・・独身だったなんて相当な遊び人か・・もしくは人間不信かもね。

 

少なくとも失恋の傷心を引きずってるとかはなさそう。ライザール王は鼻につくほどの自信過剰な男にしか見えなかった。

 

不敵な笑みで私を見据える彼はどこか似た匂いを感じた。

でも心を誰にも明け渡さないなんてその実繊細な心をお持ちなのかもしれないわね。

 

普段はカマルで踊り子をしている時は群舞の娘達を従えてトップダンサーとして踊っているから男性とこうして踊るのは久々だった。

 

ライザール様も大胆で仄かな大人の色香をまとった踊りを披露しながら、軽やかに踊る私の姿に瞠目されていた。

 

よかった機嫌直られたみたいね・・

 

踊りは大成功を収め、ライザール様の意にかなったようだった。