とはいえ正直なところ、この婚約は私にとってはとても不本意だった。

 

不正を糾弾するライザール王は貧富の差を憂えておられる方だったはずなのに・・

 

よりにもよって血筋と地位を重視した女性を娶られるなんて

・・ちょっとがっかりだわ

 

それじゃあ他の貴族と同じじゃない!

 

もっともアリ家のレイラ様――私のクライアントの方よ?

 

は深窓の令嬢とは思えぬ価値観を持たれた方だったけれどね。

身分の低い召使と相思相愛になられて手に手を取って愛のための逃避行をされたなんて・・・少し羨ましいわ

 

レイラ様が普通の貴族の姫君と違ったとしても、アリ家を選んだライザール王の考えは明らかだった。

 

有力者の大臣の後ろ盾があればより発言権が増すでしょうけど・・・

 

飢えに苦しむ貧民はそれをどう思うかしら・・・?

きっと彼のような方は他人に理解を求めないし、目的のためなら手段も問わないのでしょうけど・・・

 

すでに妻になる女も逃げ出してしまったなんて・・・

まさに孤高の王に相応しいわ。

 

王を貶めたいわけじゃないし、そう思えば加担している身ではあったが心は晴れなかった。

 

「レイラ殿・・?どうした・・上の空のようだが・・退屈されたかな?」

 

 

今は婚約披露の宴の真っ最中だった。

同伴した私を有力貴族に紹介するため、歓談されるライザール王が私を訝しむように見ていた。

 

「あ、申し訳ありません。滅多に家から出なかったものですから・・立派な方々にお目にかかれて胸がいっぱいになってしまったようです」

 

あたりさわりのない言い訳だったが、相手の貴族は笑み一つで懐柔できたようね。

 

「おお・・本当になんとお美しい・・・王が羨ましいですね。初夜が楽しみでしょう」

 

!?

 

なんと嘆かわしい。これが我が国の大臣クラスの男の発言だなんて。

 

けれど私はあくまでもレイラ様として振舞わなければ・・

 

「あら・・・嫌ですわ・・ふふふ。私も初夜って楽しみで待ち遠しいです」

 

ああ・・居たたまれないわ。こんなところジェミルには見せられない。

 

バカって駄目だしされるに決まっているもの。

 

無邪気な私の言葉に大臣達は目配せして失笑していたけれど

ライザール様の反応はというと・・

 

彼は怒りを露わにすることはなかったけれど、不快さがにじみ出た表情をしていた。

 

まあ当然の反応ね。公然と王の前で王妃となる女を侮辱したのですもの。

 

でもライザール王が選ばれた女性はだいたいこんな感じの方よ?お生憎様!