アスラがつけていた衣装のまま、寝台で座して待っていると店主に連れられた客が姿を現した。

 

成りすましを見破られないようにベールを目深にかぶっていたから客の顔は見えない。

 

「ああ・・・気に入った。問題ない・・・朝まで人払いを」

 

「もちろんでございます旦那様・・どうぞごゆっくり・・・生娘ですからお手柔らかにご吟味くださいまし」

 

取引がまとまったのか上機嫌な店主らしき男と客の会話が漏れ聞こえる・・

 

 

なんだか聞き覚えのあるような声ね・・・?

 

ドアが閉まり足音は近づいてきた。

 

「アスラ・・・か?」

 

 

彼女の源氏名はアミーラだったはず・・なぜ本名をこの男が?

 

貧民の失踪人など誰も探さないとはいえ、違法な取引である以上、高値をつけてもらうために出身地や名前などはすべて偽っていたはず・・発音でばれそうなものだけど・・あさはかよねえ

 

とりあえず様子を窺うために頷く。

 

しかし男は不信を感じたのか突然私の顎をくいっと持ち上げた。

もちろんベールをしているから顔はわからない。

 

男もベールで口元を覆っていたから顔はわからない・・はずなんだけれど・・

 

ベールの隙間から覗く琥珀色に燃える瞳・・・

 

トクン

 

「・・・・ライザール・・・さま?」

 

私の呼びかけに彼は瞠目した。やっぱりそうなのね・・まさか彼とこんな場所で出会うなんて・・・

 

「・・・まさか・・・シリーンか?」

 

名を呼ばれた私はベールを取り去ると、寝台に寝て誘惑するように彼を見つめた。