どうして彼がこんな場所にいるかなんて・・聞かずともわかってしまった。
彼は正義の人だった。
トイの窮状を放っておけずに、自ら動いたのでしょうね。
迅速な対応が必要だったから正攻法ではなく取引を成立させることでアスラを救い出そうとした。
まさか一国の王がたった一人の少女を救うためにそこまでするなんて・・
なんて人なの・・・
「アスラならもう仲間が脱出させたから大丈夫よ?・・・だからいいでしょう?」
少なくとも朝まで過ごさないと騒ぎになりそうだった。
17歳の無垢な少女と私じゃ大違いでしょうけど・・ね、我慢してちょうだい?
けれど事情を察したのかライザール様は不敵な笑みを浮かべると寝台に横たわる私に覆いかぶさってきた。
「役得だったな・・・善行はしてみるものだ・・最近ご無沙汰だっただろう?」
まるで肉食獣のような彼の琥珀色の双眸に魅入られてしまう。
唇を重ね合わせながら服を脱がせ合う。
こんな場所で彼とこんなことになってしまうなんて・・
彼らもまさか取引した相手が王とは思わないでしょうね。
人相悪いわよ?盗賊かと思ったわ。
「こんなところで会うなんてね・・まさかお気に入りの花でもいるのかしら?」
彼に愛撫を施しながら上目遣いで尋ねるとライザール様は憮然とした顔で言った。
「・・・・っ・・・・いない。・・まさかお前こそこんな場所で働いているわけじゃないだろうな?許さんぞ」
失礼な方ね。でもまあ技巧を褒めていただいたということにしておきましょうか。
私を独占したいとおっしゃってるのよね?素直じゃないんだから
「美女からの最高のもてなしを受けられるなんてここはなかなか良い店だな。解体するのが惜しいが・・・」
!
やはり最終的にはこの店を取り潰す気なのね。違法な店だからしかたないとはいえ花たちはどうなるのかしら?
生活のためとはいえやりきれないわね。
一度堕ちてしまえば這い上がるのは難しい国だった。
攫われた娘ならまだ救いの手は差し伸べられるでしょうけど、他の花たちは明日を生きるためにまた流されていくのだろうか。
私だって店主様に拾われなければそうなっていたかもしれない。
もし私が夜の花でライザール様が客だったなら仮に愛が芽生えたとしても刹那の関係で終わっただろう・・
泡沫の夢を見ることしか許されない・・ここはそういう残酷な場所。
私はたまたま運が良かっただけだった。
今夜彼がこの場所に来たのは天の配剤かもしれなかった。
私が動かずともアスラは助かったことが嬉しかった。
ジェミルがなぜこの場所にいたのかは結局わからなかったけれど、ライザール様と鉢合わせずによかったわ。
私も久々にライザール様に抱いてもらえたし。
ああ・・・ん・・すご・・・い
腰を掴まれて深く穿たれる度にこらえきれない嬌声がもれてしまった。
あの夜は久々に燃えたわ。
結局明け方までいて、何食わぬ顔して撤収したのよね。