軽い打ち合わせの後店主様のお部屋にも伺う。

 

「やあシリーン戻ったのだね、助かったよ。今夜は頼んだよ」

 

少し顔色がお悪いのはいつものことだけれど、体調は安定しているみたいでよかったわ。

 

そうだ、やはりライザール様のことは話を通しておいた方がよさそうね。

 

「店主様、今夜の舞台ですが・・もしライザール様がいらっしゃったらお見せしたいのです。構わないでしょうか?」

 

すると案の定店主様は思案されてしまったが、やがて笑顔で頷いてくれた。

 

「そうだね、君のすべてを見てもらったほうがフェアかもしれないね」

 

 

どういう・・・意味かしら?

 

釈然としなかったがとりあえず許可がでたことに安堵する。

相変わらず掴みどころのない方ね店主様は・・・

 

以前ジェミルが女装したことをそれとなく相談した時も謎の笑みを浮かべた後、

 

「ははは・・・ジェミルも年頃だからねえ・・そっとしておいてあげなさい」

 

っておっしゃったきり。まあいいわ・・・

 

とりあえず大事なのはライザール様の訪問を店主様が許可してくださったことと、彼の血を所望しなかったことだわ。

 

いくら店主様の頼みでもこの場所でライザール様に抱かれるのは抵抗があった。

 

だってこの場所は・・・私の家ですもの。

 

この場所で私はただの娘だった。舞台の上でこそ舞妖妃になれるけれど、女として振舞うことはできそうになかった。

 

もし仮にライザール様が来てくださったとして・・

彼に求められたら・・拒めるだろうか

 

一緒に過ごしたいけれど抱き合う以外のことをしてみたかったの

そういう微妙な女心わかってくださるかしら?

 

来て・・・くださるわよね?

 

お忙しい方だけに都合がつかないかもしれないわね。

 

けれどライザール様は来てくださった。

 

舞台で舞妖妃として踊りながら客席を見渡した私の視線の先に彼はいた。

 

いつかみたいに変装されていたけれど・・やっぱり盗賊にしか見えないわね汗

 

でも貴方の燃えるような琥珀色の瞳が好きだわ・・

 

今夜は貴方のために踊るから見ていてちょうだい