店主様やアスラの為に私がしたことなんて本当にささやかなことでしかないのに・・

 

認めてくださる一方で私の身を心配してくださるなんて・・・

 

危険なのは承知でしていることだけれど、やっぱり気にかけていただけて嬉しかったのよ?

 

以前の私なら、店主様に褒めてもらえたらそれだけで満足だったのに・・

 

今ではそれだけでは物足りないの・・・

 

貴方の傍にいると安心してしまって・・ただの女でいたいと思ってしまうことが増えてしまった

 

だけど同時に私の前くらいでは貴方にもただの男で居て欲しい時はあるからきっとお互い様なのね。

 

でもそういう瞬間があってもいいと思うようになったわ。

 

貴方の代わりに抱きしめたお気に入りのクッションも心地よくてつい微睡んでしまう。

 

今夜は誘惑する気はないし、もう少しだけこのままでいてもいいでしょう?

 

・・・・・

 

気づいたら寝台に寝ていて、すでにライザール様の姿はなかった。

 

わざわざ運んでくださったのね・・

 

寝顔を見られるのは気まずいから立ち去ったのは彼なりの気遣いだと思うけど・・

 

もう帰られたかしら・・?それとも・・・

 

店主様はご存じだから、もしかすると会われている可能性はあるわね。

 

いくら相手が親しい方達でもさすがに室外でこの姿で会うのは気が引けたからガウンをまとい、身だしなみを整えるために化粧台の前に移動した。

 

さりげなく確認した中に例の口紅がなくてホッとする。

 

良かったわ・・まだ持ってらっしゃるみたい・・

願掛けたあの口紅は彼に持っていて欲しかった。

 

はやる気を落ち着けてから、私は店主様の部屋へと向かった。